パスカル数理ゼミ
パスカル数理ゼミ
「「分かる」とは少なくとも、それに関して二つ以上の説明方法を持つこと。それが出来たとき初めて私は『本当に分かった」と感じる」

 私は今年、東京科学大学(旧東京医科歯科大学)医学部医学科に推薦入試で合格しました。
まずは私の学校生活について書きます。私は中高の間は「わくわくする」方向に進んできたと思います。最初のわくわくは英語でした。中学校から始めた英語は学校で素晴らしい先生方に出会ったことで大好きになり、私の一番の得意教科になりました。学校の勉強以外でも英会話ラジオやBBCの英語学習番組、実業家や科学者のプレゼンを聞けるTedなどを聞いて、英語を通して文化や新しいアイデアを学びました。これらの学びを海外で実践したいと思い、高1の春に学校が行う英国研修に参加しました。しかし、現実は厳しく、コミュニケーションが上手くいかないなど挫折を味わいました。幸い素敵な人との出会いもあり、それをきっかけにホストファミリーと話すことで互いを理解できた瞬間がありました。私の世界が大きく広がったとともに、その経験がモチベーションにもなり、帰国後も英語の勉強に励むことができました。
一番の苦手科目だった数学に向き合うときもわくわくする気持ちを大切にしました。パスカルの上甲先生の数学の授業では、基本の定義や日常的な話題から始まって関連する分野を横断しながら、応用・発展まで学ぶことができます。1回1回の授業が数学の世界を旅しているようで、その興奮を家に帰ってよく母に語っていました。しだいに数学に抵抗がなくなり、前向きに取り組めるようになりました。応用問題も色々な種類の基本が組み合わさってできているから、まずは解くための引き出しを増やす。本質が同じものはまとめて、問題を解く時にさっと引き出して最適なものを選び、組み合わせられるようにする。このようにパスカルで考え方を学びながら、問題集や過去問でアウトプットを繰り返すことで、高3の後半では数学が足を引っ張ることはほぼなくなりました。
3つ目のわくわくは探究でした。高1の時に子どもの遊びについて、高2の時にメンタルヘルスケアにおけるAIの活用について探究を行い、それぞれ論文にまとめました。取り組む前は研究は高尚なものに感じられて自分には向いていないと思っていました。しかし、心惹かれるテーマに出会い、飛び込んでみると、未解決の問題を発見して自ら紐解いていく面白さに夢中になりました。知らなかった自分に出会って新しい道が開けた、とても良い時間だったと思います。探究の中で生成AIを使って実際にメンタルヘルスケアAIの作成に挑戦したことで、医学とAIについてさらに学びたいと考えるようになりました。そこで、医歯学系と理工学系が連携した教育環境で分野を横断して学ぶことができる東京科学大学を志望しました。大学では医学に加え、データサイエンスやAIのプログラミングなども学んだり、様々な専門の先生方や学生と交流して、自分の軸を増やし、深めたいです。
将来的には、幅広い分野の専門家とチームを組んで、心の健康を支えるAIを作りたいと考えています。メンタルヘルスケアにAIという選択肢を加えることで、精神疾患の予防や早期介入に繋げる医療の枠組みを作り、1人でも多くの人の力になることが夢です。
私はこのような学校生活を送ってきましたが、注意していただきたいのが、初めから大学入試で有利になりそうな課外活動を選んで取り組んだつもりはないということです。心の底からわくわくすることに取り組んでみると、なぜか次にやりたいことが見え、頼れる人に出会い、結果として今に繋がったイメージです。情報を収集するのは必要ですが、役に立つことばかり優先すると、どんどん視野が狭くなって引き返せなくなったり、追い込まれてしまうことがあります。歴史学者の磯
田道史先生の言葉を借りれば、「人からやってと頼まれないことに熱中する時間」も大切だと思います。報われるかは分かりませんが、人生が面白くなると思います。自分は何にわくわくするのだろうとアンテナを張って、ビビっとくるものをやってみてください。
また、失敗は宝物です。学校生活だけでなく、勉強面でも私は本当にたくさんやらかしてきました。例えば、模試ではマークがずれたり、計算ミスや転記ミス、問題文や条件の読み落としなどで点を落としたりしてよく落ち込んでいました。高3の夏になり、冠模試を受けたとき、東大志望の子と席が隣になりました。数学がよくできる子だったのでさらっと解いてしまうのだろうなと思っていました。ところが、彼は方針を立てた計算用紙と清書した解答用紙を照らし合わせ、ミスがないか指差し確認をしていたのです。本当に指差し確認をする人がいるのかという驚きと、こんなに数学ができる人でもミスを前提としてリカバリーの方法を考え、実行している、それも含めて実力なのだと衝撃を受けました。
このときから私はミス対策に全力で取り組むようになりました。自分がしやすい間違いとその対策をまとめたリストを各科目作り、模試の度に読み返し、実践することを繰り返しました。徐々にミスは防げるようになり、試験本番では自分の力を最大限発揮できました。このように失敗をすれば、自分の癖がわかり、対策を練ることでコントロールすることができます。自分が成功しやすい環境を自分で整えることができるのです。だから上手くやろうとしないで、たくさん失敗して、たくさん学んでください。
ここからは受験する時のポイントについて書きます。いざ、志望校を受験するときは推薦でも一般でも、「大学側にサインを送る」ことが大切です。なぜその大学に行きたいのか、なぜその大学に自分がふさわしいといえるのかを志望理由書や面接ではもちろん、筆記試験でも答案のレイアウトを分かりやすく構成する、文字を丁寧に書く、一つ一つの変形や言い換えが同値なのかどうか常に確認して論理を一貫させるなどで示すのです。大学側も、このようなサインを送り続けてくれる人には好印象を持ち、丁寧に見てくれるはずです。特に推薦入試で的確なサインを送るためには、自己分析と大学との相性を見極めることが必須です。しかし、高2まではまずは記述試験に備え、日々の問題演習から答案を読む相手がいることを想定して、伝わる答案を作ることを意識してみてください。
また私と同じ学校に通う人は自主性を持つことが大切だということを特に伝えたいです。広福は他の学校と比べて自由度が高い分、自分をしっかりコントロールしてコツコツ勉強しないと、周りに流されてしまうこともあります。(私を含め、同級生を観察して思うことです)楽しむ時は思いっきり楽しみながら、高2までは試験勉強はきっちり取り組んで高3からは受験勉強に集中するといいと思います。
最後に、私が受験を乗り越えられたのは、私の数学を中3から見てくださったパスカル数理ゼミの上甲先生、いつも声をかけて下さり、話を聞いてくださった渡辺先生、切磋琢磨してくれた友人たち、そして私にずっと寄り添い、支えてくれた家族のおかげです。本当にありがとうございました。
ここまで私の学んだことを目一杯詰め込んだので、ひとつでも皆さんのお役に立てれば幸いです。わくわく進んでいく皆さんのことを心から応援しています!